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最高裁判所大法廷 昭和32年(あ)2号 判決 1961年12月20日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人杉之原舜一の上告趣意について。

所論一、二は要するに、団体等規正令(昭和二四年政令六四号)は、昭和二〇年勅令五四二号に基づき制定されたいわゆるポツダム命令であって、憲法九八条一項に違反し、平和条約発効後はその効力を有しないものであり、したがってまた平和条約発効後一定期間その効力を有するものとした昭和二七年法律八一号二項及び団体等規正令廃止後もなお従前どおり罰則を適用する旨を定めた破壊活動防止法(昭和二七年法律二四〇号)附則三項(論旨に第一項とあるは第三項の誤りと認められる)もまた違憲無効であるというのである。

しかし、右勅令五四二号は、平和条約発効前においては、日本国憲法にかかわりなく、憲法外において法的効力を有していたものであることは、夙に当大法廷の判例の趣旨とするところである(昭和二四年(れ)第六八五号、同二八年四月八日判決、刑集七巻四号七七五頁以下参照)。したがって、右勅令五四二号に基づき制定された団体等規正令もまた、平和条約発効前においては、憲法外において法的効力を有していたものといわなければならない。

ところで、原審の維持した第一審判決によれば、被告人らは平和条約発効前である昭和二七年一月二七日その認定のごとき行為をなし、もって暴力主義的方法を是認するような傾向を助長したものであるとして団体等規正令二条七号、三条により平和条約発効後において処罰されているのである。

よって平和条約発効後における同令同条の効力について考察するのに、同令の平和条約発効後における効力の有無については、その規定内容が日本国憲法の条規に違反するか否かによって決すべきものとするのを相当とする。

しかるに、右団体等規正令二条七号、三条は、平和主義と民主主義を基調とする日本国憲法の趣旨に照し、決して相容れないものでないことは、原審判示のとおりであるから、同令の同条項が憲法九八条一項に違反し、平和条約発効後は当然失効したものであるとする所論の主張は理由がないものというべく、したがって平和条約発効後一定期間その効力を有するものとした所論昭和二七年法律八一号二項及び団体等規正令廃止後もなお従前どおり罰則を適用する旨を定めた所論破壊活動防止法附則三項が違憲である旨の主張もまた採ることを得ない。

所論三は、団体等規正令二条七号にいわゆる暴力主義云々の規定は抽象に過ぎ、裁判官の主観によって、いかようにもその罪の成否の基準を左右することができるから、憲法の保障する罪刑法定主義に抵触し、ひいては思想・表現の自由をおかすものであるというのである。

しかし、団体等規正令二条七号には、「暗殺その他の暴力主義」とあって、暴力主義の意義内容を、例示の方法をもって、ある程度具体化しているばかりでなく、他の号及び一条(この政令の目的)等を綜合して勘案すれば、本件に適用された同号後段の犯罪構成要件はおのずから明らかであり、裁判官の主観によってその罪の成否が左右されることはないと考えられる。

されば、これと相容れない独自の見解を前提とする所論違憲の各主張はすべて採ることを得ない。

被告人酒城繁雄の上告趣意は、違憲を主張する部分もあるが、憲法のいかなる条項に違反するかを具体的に明示しないから不適法であり、その余の論旨は事実誤認の主張に帰し刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人前田正吉の上告趣意は、ひっきょう事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。違憲を主張する点もあるが、憲法のいかなる条項に違反するかを具体的に明示しないから不適法である。

よって刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田喜三郎 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一 裁判官 山田作之助)

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